×真夏の[変態]恋伝奇×
「今は簡単にできるのね。感動しちゃった。だからすっかり常連さんよ」
「は、はあ…」
そうか、ヒアルロン酸…。
洋子さんは社長夫人だ。
美容にかけられるお金だって、凡人とは桁違いな訳だ。
地域婦人連〇会の化粧水でしのいでいる、うちの母親とは違うのだ。
「でもねえ、そうやって通いつめてたら、あっという間にお金なくなっちゃって。
お料理苦手なのに、家計が苦しくって外食できなくなるし。トオルくんのお店には感謝してるわー。こんなに安くお野菜が手に入るんだもの」
洋子さんはにこにこ笑って言った。
きっと今までなら、この笑顔にときめいていたのだろうが。
やはり年齢を知ってしまったからなのか。
…どうも古くさく見えてしまう、ような。