×真夏の[変態]恋伝奇×
和也は、「普通にかっこいい」。
雑誌の表紙を飾るようなモデルに負けないスタイル、顔立ちをしている。
うちの高校にファンクラブが出来るほどで、"カズサマ信者"という訳のわからない猛烈なファンが多くいるようだ。
だけど皆、和也が究極のナルシストだっていうことを知らない。
そんな奴の幼なじみをやっているあたし。
あたしは和也のほとんどを知っている。
たとえば、女慣れした雰囲気を醸し出しているくせに、ただの一度も女を作ったことがないってこととか。
理由は簡単、彼は誰よりも自分を愛しているからだ。
「そこらの女より、鏡に映った自分の方が相当可愛いく見えんだよなぁ。なあ、奈帆、俺ってかっこよくね?」
当時中二だった和也の、歴史的な名言だ。
とても十四の少年が発する言葉ではない。
彼はその生まれもった美貌のせいで、他人ではなく、自分自身しか愛せなくなっていたのだ。