×真夏の[変態]恋伝奇×
「そういう奈帆こそ、彼氏欲しいとか思わねーの」
ドアノブを掴んだ手が止まった。
背後から飛んできた声に、一瞬、なんて答えればいいのかわからなくなったからだ。
…彼氏?
そんなの欲しいに決まってる。
あたしだってちょっとくらいはノーマルな恋をして、この胸を高鳴らせてみたい。
こんなナルシスト野郎のことなんか一秒も考えなくていいくらい、誰かに夢中になってみたい。
だけど無理だ。
和也が、俺は俺しか愛せないと言い切れるように、あたしも他の誰かに夢中になることなんてないと言い切れる。
夢中にさせてくれる彼氏じゃなくて
「…欲しいよ」
いま、この瞬間も考えている、夢中になっている奴がいい。
「"普通にかっこいい"彼氏ならね」