ガーネットとシトリン
しばらくすると、ドタバタと足音が聞こえてくる。
痛いのを我慢して首を横に動かすと、そこには医者と看護婦らしき人物と、さっきの男性がいた。
「意識が戻ったんですね!」
医者の声が頭に響く。
「意識……?」
声を出すと、少し掠れていた。
「はい、でも意識が戻ったようでよかったです」
「私は……何かあったんですか?」
「覚えてないんですか? 高月さんは交通事故に遭ったんですよ」
高月とは誰だろうか。
もしかして、私のことを言っているのだろうか。
私の名前は……
名前……?
「あの、高月って……?」
「……何を言ってるんですか? 貴方のお名前ですよ?」
「私……名前……」
必死に頭をひねる。
でも名前を思い出せない。
いやそれどころか、自分のことをすべて思い出せない。