天神学園高等部の奇怪な面々Ⅵ
(尾行してたの、ばれてるっ?)

物陰に身を隠すルイ。

ヴァースキは振り向く様子も、気づいている様子もない。

ただ、ひたすらに語り続ける。

「ヴァースキとは言った通り、インド神話における呼び名でな。日本に伝来した時はその名を『九頭龍大神』という」

一体誰に語りかけているのか。

ルイ?

独り言?

それとも…。

「…!…」

ルイが思わず息を飲む。

体育用具倉庫の屋根から、陰から、大柄な人外が身を乗り出してきた。

人外ならば天神学園にも存在するが、ここに現れたのは、そんな人間然とした姿のものではない。

灰色の体毛に覆われ、赤黒い肌を持ち、頭部に一対の角を持つ真紅の眼の化け物。

そのような人外は、一般的に伝承や言い伝えの中では『鬼』と呼ばれた。

< 54 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop