神さん
ガチャ…




バタン!




「ただいま〜」




涼子だって分かってる。一人暮しなんだから誰も返事をしてくれないことくらい。





でも言わないと余計に静かな部屋が怖かったのだ。





でも今日はいつもと違った。





「お帰りなさい。」




そこにはなぜか神さんが爽やかな笑顔を振り撒きながらメイが作らないはずのカプチーノを飲んでいる。




「あら?もしかして勝手に上がったこと怒ってる?たまたま近くにきてたから寄ってみたんだけど……」



神さんはそう言いながら涼子の顔色をうかがった。




「ごめん!すぐ帰るつもりだったんだけど、もう涼子が帰ってくる気がしたから待ってたんだ。」




涼子はしばらく無言だった。でもそれは怒っていたからではなく、実はすごくうれしかったからだ。





ひさしぶりに聞いた「おかえり」と神さんが何で知ってるかわからないけど、名前を呼んでくれたことがうれしかった。




「いーよ。別にいつ来てくれても誰も来ないし。でも今度くるときは差し入れくらいもってきてね。」




涼子は神さんを意識し始めた自分に気付いてしまった。
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