神さん

幸福の期限

神さんって何者なんだろう……涼子は今更になって気になっていた。




窓の外では白球を泥まみれで追い掛けている野球部員が見える。





教室に夕焼けが差し込んで眩しかった。でも不思議とそこを動こうと思わなかった。




ボールは気分屋。




自分の好きなだけ転がって、気が向いたら立ち止まる。




「神さんみたい……」




「何か言った?」




なつこ先生が不機嫌そうな顔をしている。




「涼子さぁーもうすぐ高校卒業よ?進路いい加減決めなきゃだめよ。クラスであとあんただけよ?」




「なつこ先生。」




「なに?」



「ただそれだけを手にしたいって言う気持ちが持てたら、私も少しは素直になれるのかな?」




「はぁー…、それって進路に関係あることなの?」




「いまの私には一番大切なことなんです!!私……もう今日は帰ります!」




涼子は教室から走り出した。




外は夜なのに蒸し暑い。生温い風が体に絡み付く。
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