神さん
「はぁ、はぁ…私何やってるんだろ。そういえば久々に走ったな。」





「おかえり」



振り向くと校門に神さんがいた。本当なら驚くべきなんだろうけど、そんな元気も出ない。




「お腹空いたから早く帰ろう。」
「そうだね…早く帰りたい。」




歩く姿が夕日に照らされて二人の影が道路に伸びている。涼子はその影を目で追いながら二人の距離を眺めていた。





少し近付いては、少し離れる影。手を伸ばせば掴める手がなんだかすごく遠く感じる。





「神さんにも影はできるのね。」「まぁ……生きてるからね。影くらいよ。」





「神さんも歳をとるの?」「もちろんとるよ、寿命だってある。ちなみに今年で28歳だよ。」





涼子は突然足を止めた。




「じゃあ神さんも恋をするの?」




神さんは歩き続けた。




「……するよ。だからいまここにいるじゃん。」
< 6 / 13 >

この作品をシェア

pagetop