えみだま
高須の家から俺の家までは遠い。

「そろそろ帰るか」

「そうするか」

野口は良い返事をしたが、岩田からは聞こえない。

岩田は寝ていた。

「人の家で寝るとは…」

「いつものことだ」

高須は笑って言う。

「とは言え、時間だからな。起きろ」

「…うん。起きる」

仰向けの岩田は、素早く上半身を上げた。

「早っ」

「浅い眠りだったんじゃん?」

何故か高須はわかりきってるように言った。

「帰る時間?」

「おう。準備しろ」

岩田は寝ぼけながらも、立ち上がる。

「忘れ物はないか?」

「…多分」

高須が保護者みたいだ。

「「お邪魔しました」」

そう言って、高須も一緒に家を出た。

まず最初に自転車にまたがったのは俺。次に野口。

「…あれ?」

岩田はポケットやバッグの中を漁る。

「キーくんがいないっ」

「取りに言って来い」

「再びお邪魔します」

キーくんとは鍵のこと。高須の一言で、急いで高須の家に入った。

「お邪魔しました~」

岩田は鍵を見つけたらしい。早いな。

「部活でも、ラケットがいないっ、とか言うのか?」

「それはないよ」

あまりにも普通に返された。

「だって、ラケットじゃなくて、ケートだし」

「「そこっ?」」

ラケットにも名前あったのか。

そうだよな。ケータイにもケータって名前あるしな。

つーか、じゃあ、ラケット忘れたことあるのかよ。

「そういえば、瑞紀もテニス部入れば良いのにね」

「全くだ」

「笑いが絶えないぞ」

岩田、高須、野口は同意見のようだ。

「生徒会だって」

「少しぐらい遅れたり、休んだりしても問題ないでしょ」

「多分な」

「あんな部活だし」

軽いなぁ。野口に至ってはけなしてるし。

「あ、瑞紀達帰らなくて平気なの?」

岩田の一言で、大変なことを思い出した。

帰りが遅いと、母親がお怒りになられる。

ってか話題ふったの岩田だろ。

「そろそろ帰る。またな」

俺と野口は帰ったが、高須と岩田はまだ話していた。

仲良いな。いつからの仲だっけか?
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