えみだま
「ってか、上甲一緒じゃなかったのか?」

先に着いた高須は、岩田が後から来たことを不思議に思ったようだ。

「夕月か天音、どっちかに用があったらしいけどな」

「紅祐が?」

「おう」

「ふ~ん…」

高須は何かを考えている様子。

その後、高須は何故か和島のところへ行った。



コート整備と準備運動が終わり、練習が始まった。

ストローク、ボレー、スマッシュ。

3つは決められたように打つ。

その後にサーブ。

これは自分のタイミングで練習出来る。

ボール籠から2球取って、ベースライン、奥のラインから2球打つ。

打ち方はある程度自由。

フォーム、形さえ良ければ、フラットでもスライス自由。

オレはとにかくフラットを練習しよう。

「まだ少し打点が低い」

「…すいやせん」

夕月は冷たいというか、厳しいというか。

「態度がデカい、だろ」

「そうそう…って、心読まれた?」

声の主は岩田。

「顔という名のフェイスに書いてある」

「結局顔だし」

あはは~、と気楽に呑気に笑う岩田。

「ってか、認めたね?言っちゃうよ?」

「いや、待て。それはない」

「じゃあ、次のサーブ入れたら黙っとくよ」

何の駆け引きだよ。

「オレ不利だし。利益ないし」

「あ~、じゃあ…」

「早く打てよ」

高須に言われてしまった。

「わかった。待って」

岩田はさっさと打った。

1球目はフラット、2球目はスライス。どっちも当たり前のように入る。

岩田のフラットは、ほぼ真横を向いた姿勢から、前にジャンプしながら打つサーブ。

「オレが勝ったら、サーブ教えて」

「えっ?」

そんな驚くようなこと言ったか?

「俺が言おうとしてたの、そのまんまじゃん」

最初から、オレの代償の方がデカい方向で考えてたのかよ。

まぁ、いいか。

「よし」

オレは肩を回して気合いを入れる。

トスを何回かしてから、球を真上に上げる。

「あ~、そうそう」

「あっ」

岩田が何か思い出したように言ったのに気を取られ、オレはサーブをミスった。

「急に話し掛けるな」
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