Secret Garden!!〜オトコだらけの秘密の花園〜
夏休み初日。
「う〜ん…」
リビングのガラスのテーブルにうつ伏せになって唸っていると、頭の上から苦笑する声が聞こえる。
顔をあげると、そこには棗さんがいた。
「ほら、レモンスカッシュ。またあんたは…何を唸ってんの?」
テーブルの上にグラスを二つ置きながら、棗さんは私の横に腰を下ろした。
「…いろいろ、分かんないことがあるんです〜。」
クッションを抱えながら言うと、棗さん恒例、鼻で笑われた。
「ない脳で悩んだってハゲるだけだよ?」
そう言って、棗さんはグラスに口をつけた。
「なっ…!失礼なっ!棗さんに言われたくないですっ!」
軽く睨むと、棗さんは目もとだけで笑った。
「…。」
棗さんの表情を見るとなんにも言えなくなって、私は黙ったまま、レモンスカッシュを口に含んだ。
酸っぱくて、少しほろ苦くて、しゅわしゅわする。
「陽依は騒いでればいいんじゃない?そこが、陽依のいいとこだよ。…ま、悩みなら聞いてやらないこともないし、さ。」
私が持っていたクッションを奪い取りながら、棗さんはそう言った。
「あ、新しい写真集と個展のチケットあげる。」
レモンスカッシュを一気に飲み干した棗さんが、立ち上がりざまにぶっきらぼうに言う。
「あ、ありがとうございます!個展、楽しみ!」
棗さんの写真が大好きだから、素直にお礼を言うと、棗さんは私から奪い取ったクッションを私めがけて投げてきた。
「…った!棗さんっ!」
「…ばーか。」
そう言ってリビングを出ていく棗さんの耳は、やっぱり赤かった。
そんな棗さんの姿が、面白くて案外可愛くて、そして…
少しだけ、切なかった。