DOORS
『気に入って頂けましたか?』
背後から急に声が聞こえて慌てて振り向く。
そこに居たのはシルクハットを被った年齢不詳の男性。
私よりも年上だとは思うけど…。
シルクハットから覗く瞳は少し冷たいような印象を受けるが、微笑みは温かい。
『そちら状態は良いですが、この店の中で1番古いものなんですよ。』
「えっあ…すいません、触ってしまって。」
男性の言葉に我に返りネックレスを元の場所へと戻した。
『構いませんよ。きっとそのネックレスが貴方を選んだのでしょうから。』
「選んだ?」
『そのネックレスは長い時間存在しているからか少し不思議な力が在るようなんです。』
「…不思議な力?」
『はい、鍵に埋め込まれている石は持ち主を良い方向へ、間違わない選択へと導いてくれる意味があるんです。』
「選択…。」