DOORS
「あ、あの…今持ち合わせがないのでまた今度にします!」
精一杯の勇気を振り絞り男性に伝える。
『差し上げます。』
「へっ?」
『鍵が貴方を選んだのです。きっと導いてくれるでしょう。』
「そんなっ!高額なもの戴けません!」
『いえ、元からその鍵には値段なんてないのです。鍵が選んだ人の元へ渡り、役目が済んだらいつの間にか此処へ戻ってくる。
現代風に言うとレンタルってことですね。
なのでご遠慮なさらず是非連れて帰って下さい。』
そう言って男性は微笑んだ。
優しげな微笑みなのに有無を言わせない迫力に負けて、私はそのネックレスを持ち帰った。