ONLOOKER Ⅲ


里田が嫌がらせを仕掛けた方法は、様々あるとして、だ。

そんなもの、彼女でなくても出来たに違いない。
犯人候補に名前が挙げられていた他の二人である可能性だって、捨てるには十分ではなかったはずだ。

直姫は、はじめに生徒会室に呼び出して話を聞いた時から検討がついていた、と言った。
気になるのは、なぜそんなに早い段階で里田が犯人だと分かったのか、ということだ。

状況は大雑把に、二手に分かれていた。
早いうちから犯人の正体にぼんやりと気付いていた側と、そうでない側。
前者は、直姫と准乃介、そして夏生だけだったようだ。


「とりあえず、あの三人以外だって可能性は、低いじゃないですか。もし、自分じゃない誰かが生徒会に目を付けられてるって分かったら、その人に罪を着せるために、わざとらしいくらい証拠を残すと思ったので」
「あぁ、それもそうだな……」
「あとはやっぱり、いやがらせの内容ですかね……。なんか、精神にくるやつだったり痛いやつだったり、あの手この手って感じだったんですけど。でもやっぱり、件数が増えるほど、女性の仕業って考えるのが妥当な方に偏ってきてて……詰めが甘かったんですよね」
「毎日休み時間のたびに、なにか見つけていた気がするからな……」
「サンプル数が多かったから、偏りがはっきりわかっちゃったわけっすね……」
「准乃介先輩も結構前から分かってました?」
「んー、なんとなく、ね。リップクリームで確信したかな」
「え、なんでっすか? あれこそ、誰にでも盗み出すチャンスあったじゃないですか」


口を開けて首を傾げる聖に、夏生はちらりと視線を送った。
流し目のままで溜め息を吐く。

「な、なに」と、まず罵倒が来るかと身構える友人に、夏生は答えた。
彼にしては珍しい、実に親切な対応だ。

< 110 / 208 >

この作品をシェア

pagetop