ONLOOKER Ⅲ


「先輩たちだってわかってたのに、どうせ同じような理由で言わなかったんでしょう。ずるいですよ、面倒な役回り押し付けて」
「そりゃー、だって……俺もほんとは女子なのかって疑われちゃうじゃん?」
「身長186cmの細マッチョがなに言ってんスか」
「あ、先週測ったら188cmだったよ」
「まだ伸びんの!?」
「夏生なら、実は男装っ子って噂が立っちゃうかもにょろね」


恋宵がそう言うと、夏生は聞こえるように舌打ちをした。
これを言われるのが嫌で、黙っていたらしい。

三人とも、いらない保身のためにあんな回りくどいことをしたというのだ。
こっちは振り回されたんだから、このくらいの皮肉は言わせてもらって当然だろう、と聖が唇を尖らせた。


「右上とかもさーどうせほんとは適当なんだろ?」
「さあ……この間テレビで見ただけです」
「え? じゃあ防犯カメラは」
「ないでしょう」


彼女の生意気なまでに堂々とした様子が、ある意味で功を奏したのかもしれない。
あまりにも迷いや躊躇がみられなかったため、聖たちまであやうく信じてしまいそうになったくらいなのだ。
紅と准乃介だけが再び、過剰な反応を示す。


「え? 嘘?」
「当たり前じゃないですか。ハリボテすらないでしょ。ほんとに見せろって言われたらどうしようかと思いました」
「な、なんだ、そうだったのか……」
「なんで先輩たちそんにゃ焦って……はっ! さては二人共、ここで授業サボってお昼寝してるにょろ?」
「そ、そんなことするか!」


彼らが揃って慌てている本当の意味を、なんとなくでも理解したのは聖だけで、嫌な笑みを浮かべて目配せを送る彼に、准乃介は軽い睨みを返したのだった。

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