ONLOOKER Ⅲ
普段は飄々としている恋宵は、激情に弱い。
だが、どうしたらいいかわからずにおろおろしているのは彼女だけではなく、夏生を除いたその場の全員だった。
夏生でさえさすがにそんな騒ぎを完全無視というわけにはいかないようで、毛ほども興味なし、我関せずといったいつもの態度は、影を潜めている。
直姫はそのままこっそりと、テーブルに腰で寄りかかる准乃介の隣に立って、小声で言った。
「……どうしたんですか? ていうか、どちら様」
「なんていうか……同業者、だねぇ。恋宵の」
「恋宵の新曲あるでしょ。昨日ここで歌ってたやつ」
「はい……?」
「あれを、盗作だって言い出したんだよ」
「え」
つくづく厄介事を呼び込む集団だと、思うのはお門違いだろうか。
本人に自覚があってもなくても、直姫だってその1人なのだから。