ONLOOKER Ⅲ


「で……、乃恵さんの主張は?」

乃恵がいる手前、恋宵と同様夏生も“クラスメイトとしての接し方”をしているが、内心明らかに面倒くさがっているのだろうと、表情や声色から読み取ろうとしなくても、容易に想像できる。
なぜなら、それは直姫も、他の4人も同じだからだ。

「私、2週間後……今月の15日に新曲を出しますの。もう曲も出来上がって、これからプロモーションしようというところなんです。それなのに、Inoがその曲を自分のものとして12日に出そうとしていると、さっきマネージャーに知らされたんです」
「待ってください、どうして恋宵先輩が」
「真琴」

今は黙っていろ、と。
そんな含みをもって呼ばれた名前に真琴は従うしかなく、眉尻を下げて夏生をちらりと見た。
“生徒会長”としての彼の表情は、今度こそ読み取れない。


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