ONLOOKER Ⅲ
「山崎さん……嘘を言ってるようには見えませんでしたけど」
「んー、2年かけて作った“らしい”って言ってたし、自分では制作に加わってないんじゃない?」
歯痒い。
歯痒さについ思い切り顔を顰めてから、直姫はちらりと他に目を遣った。
各々が各々に思案顔で、自分の方を見てはいなかったことに、多少ほっとする。
直姫が感情をあらわにし慣れていない以上に、直姫が感情をあらわにしたところを誰も見慣れてはいないのだ。
そんな中、いつも猫のようにくるくると動く目が、ぼんやりと机の上を眺めたままなことに気付いて、直姫は口を開いた。
「恋宵先輩、山崎さんとは……仲、良いんですか」
口を開いてから、それが思わずだったことに気付いて、少しだけ後悔する。
最近こんなふうに“思わず”や“つい”が増えてきた気がして、今度は誰にも分からない程度に眉を動かした。
「仲、は……良くも悪くもないけろ、なんか、前から避けられてる感じはしてたかにゃ……」
「あぁ……俺らから見ても、ケッコー対抗意識剥き出しだったよな」
十数分前のやりとりで誰もが感付いてはいたが、やはり一方的なライバル視は目立っていたようだ。
先の見えない話し合いは、ただ相手側──主に、ノエルの後ろ楯の、恋宵に対する明らかな悪意を嫌というほど分からせただけで、解決策の見出だせないまま、その日はお開きとなった。