ONLOOKER Ⅲ



「恋宵先輩、大丈夫かな」
「どうかな」
「僕、山崎さんも嫌な人には思えないんだよね」
「そうだね」
「……直姫、話聞いてないでしょ?」
「聞いてるよ」
「うそ、だってさっきからずっとケータイ弄ってるじゃない」
「聞いてるって」
「えびせんはやっぱり5枚一気にかじるよね」
「そうだね」

もうやっぱり聞いてない、と恒例になった呟きを右側に受けながら、直姫の目線はやはり携帯電話に向いたままだ。
校内での携帯電話の使用は一応禁止とされているものの、ほとんど守る者がいないのは、社会的立場の強い人間を親に持つ生徒が多いこの学校での、暗黙の妥協のようなものが教師間に蔓延っているからだった。


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