ONLOOKER Ⅲ



視界の隅に常に入る跳ねた焦げ茶髪を今日も認めて、恋宵は少し顔を上げた。
ここ最近特にいつもより頬にかかることが多いのは、俯くことが増えたからだ。

そして視界の中心に常に入れていたい金茶色の頭を今日も認めて、恋宵の表情は少し緩んだ。
驚いたあとの苦笑いが優しいから、走り寄って急に抱き着こうか。
振り向いた流し目がお気に入りだから、名前を呼んで手を振ろうか。

瞬間悩んで前者に決めた時、タイミングが良いのか悪いのか、その人は立ち止まって、後ろを向いた。
びっくりさせることには失敗したけれど、目が合ってどちらともなくこぼれた笑みが、なんとなく幸せだ。


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