ONLOOKER Ⅲ
それがたった1人から向けられたものでも、とある敵意を一心に身に受けるというのは、とても精神を消耗することだ。
いや、自分しかこの敵意を相手に与えられないという必死さと、一種の使命感のような何かが、むしろ脇目も振らない、ある意味で一途な憎しみを作り出しているのかもしれない。
それにより、抱く側も抱かれる側も同じように、気力と体力を削られていた。
具体的にいうなら、ことあるごとに後頭部や横顔を刺す鋭い視線や、わざと聞こえるように言っている気がしてならない辛辣な嫌味や、かたくなに接触を拒む姿勢や、時折目を逸らしては見せる今にも泣き出しそうな顔など。
そんな小さな塵が積もり積もって、山のような重さ頑固さ存在感をもって、恋宵1人の細い肩にのし掛かっているのだ。