ONLOOKER Ⅲ


『回り道禁止。帰りは別にどうでもいいけど、10分で南校舎の保健室まで届けて』

そう言い含められたため、たった1枚の紙を手に、直姫は早足で中庭を歩いていた。
小走りにすらならないのはもはや彼女の意地だ。
このだだっ広い敷地内で何より不便なのが行き来に時間がかかることで、けれど移動設備を設けるほどでもない絶妙なラインが、憎らしい。
どうせならもっと広くしておけば車も必要になったのに、じゃなければすぐにでも、南北間で届け物をするのにわざわざ外にでなくて済むようなそれなりの設備を設けるべきだ。


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