ONLOOKER Ⅲ
そう心の中で愚痴りながら無事に保健室に辿り着いたのは、リミットまであと1分という頃だった。
この学校は4つの校舎にそれぞれ保健室があるが、南校舎の保険医は、丸い眼鏡を丸い顔にちょこんとかけた初老の女性で、名前を川中という。
「川中先生、生徒会長から届け物です」
「あらあら……西園寺くん」
「西林寺です」
「あらあら……西林寺、直也くん」
「直姫です」
「ご苦労さま。ありがとう」
入学以来、本人には不本意ながら色々と話題には事欠かなかったため、名前を覚えられていないというのが少し、新鮮だった。
それがどれだけわざとらしかろうとである。
川中教諭は目を瞑った日本猫のような顔で、にこにこと笑っていた。