ONLOOKER Ⅲ
「あら」
一言口にした小柄なその女性が、誰かに似ている気がして、聖に視線を戻す。
恐らく中年、けれどそんな表現が少しも似合わない少女のような表情をして、セミロングの黒髪も大きな目も猫のようなその人は、隣で花壇を見ていた背の高い男性の袖を引いて、こちらに目配せを寄越した。
3人の視線を一斉に浴びた聖が、迷いながら、口を開いた。
「あ。あの……お久しぶりです、今日はよくいらっしゃ」
「あーっ、あなたが直姫くん? ほんっとかわいい顔してるわねー恋宵からいっつも話聞いてるわよぉ」
「え。あ、はじめまして」
開いたがそれもほとんど聞かれることはなく、黒髪の女性はつかつかと近寄ってくると、至近距離で直姫に微笑みかける。
なんだこの既視感。
直姫の表情筋が、引き攣りはじめる。