ONLOOKER Ⅲ
先ほどまで毛ほども状況を理解していなかった直姫にでも、ここまでくれば察することができる。
要するに、この2人はアパレルブランド『IK(アイケー)』の社長と副社長兼専属デザイナーで、伊王夫妻、つまり伊王恋宵の両親、ということだろう。
この親にしてあの娘あり。
そんな言葉が一瞬直姫の脳裏を過ったほど、恋宵のあのテンションや振る舞い方が納得できる2人だ。
そして同時に、我らが顧問、竹河居吹には苦手なタイプなのだろうとも、察することができた。
きっと彼のことだ、この2人を相手にするのが面倒で、伊王夫妻と顔見知りである聖にその役割を押し付けて行ったのだろう。
「今日はまた……どうして学校に?」
「ほう、用がなければ愛娘の通う学校に突撃訪問しちゃいけないというのかい? せっかくだからかわいいかわいい娘がどんな男共に囲まれて生徒会活動に励んでいるのか見にきちゃいけないとでも?」
「いえ、あの、何の問題もないと思います、はい」
「もうパパは静かにしててよぉ。あのね、たまたまこの近くでイベントがあってね、ちょっとしたファッションショーなんだけど」
「あ、それ知ってます。3年の佐久間先輩が出るって聞きましたよ」
「そうそう、そうなのよ。あの子ほんとイイ子よね、もう優しさが滲み出てるのよ、見た目から。恋宵もお付き合いするならあーゆう人がいいわ、きっと」
「え!? いや、やめた方がいいっスよあの人は絶対! もうほんっと節操ないっスから!」
「あら、そうなの。意外」