ONLOOKER Ⅲ



「……え? あぁ、これ……」

振り返り、パソコンをずらして隣に座る真琴にモニターを見せようとした直姫は、不自然に言葉を切った。
生徒会室の重厚な扉に取り付けられたノッカーが、控えめに2度、打ち鳴らされたからだ。
校舎内にある部屋にしては不適当だと直姫はいつも感じていたが、渋いノッカーはライオンを象ったもので、その剥かれた牙に怯えてでもいるかのようなノックは、それでも生徒会室内のあらゆる動きを一瞬、止めた。
そして直姫は、開かれた扉の向こうで俯く人影に、なんてタイミングだ、と胸の中で小さな悪態を吐いた。

出迎えた准乃介は、僅かに目を瞠って、すぐににこりと笑って「どうぞ」、丁寧な仕草でソファーを手で示す。
扉の真っ正面の位置で夏生は、ゆっくりと微笑みを浮かべた。
それはまるで、彼女があのノッカーを恐る恐る叩くことを、予測していたかのような表情で。

「──いらっしゃい。山崎さん」

山崎乃恵は、1人で立っていた。


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