ONLOOKER Ⅲ
真相
「昨日落葉松さんが、教えてくれたんです。プロデューサーが誰かと電話で話しているのを、偶然聞いてしまったって」
恋宵を目を見たままで、乃恵は言った。
その瞳が不安げに揺れていることに気付いたのは恋宵で、目配せで、話の先を促す。
「どうせInoの路上ライブの映像が残っているわけでもないし、後から証人が出てきたって、Inoの熱狂的ファンがInoを庇うために言っているだけだと、取り合わなければいいと」
「最近のノエルはワンパターンになってきて、人気も勢いもInoに呑まれ気味だから、……ちょっとぐらいあやかったからって何だっていうんだ、自分はノエルを売り出すのが仕事なんだから、形振り構ってられないんだって」
「そう愚痴っているのを、聞いてしまったと、落葉松さんが」
勢いに任せたような話し方でそう語ると、少しずつ荒れてきた口調と考えを落ち着けるように、一度口を噤む。
「落葉松も……知らなかったっていうのは、本当なのか?」
彼女がソファーに腰かけて話しはじめてから、初めて口を挟んだのは紅だった。
その口調は、肯定を期待している。
「そのようです。本当にすまないと、……落葉松さんが悪いわけでもないのに、何度も」
「そうか……なんだか、こう言うのも変な話だが、…………よかった」
「えぇ。私も、そう思いました」