ONLOOKER Ⅲ
昨日の放課後、仕事が入ったと言って帰宅したときから、明らかに沈んでいるのは、気のせいなどではないはずだ。
少し掠れた声で、信じられないと言うような声色で、乃恵を真っ直ぐに見つめて言う。
「でもそれじゃ、乃恵ちゃんが」
「平気ですわ。多少叩かれることは覚悟しておきますが、悪いのは私ではありませんもの」
「事務所がそんなの、許してくれないよ。揉み消されちゃうよ、乃恵ちゃんのとこじゃ」
「落葉松さんという証人がいますわ」
それに、あとは、こちらから訴えてしまえば、それ相応の機関がすべて調べあげてくれるはずです。
そう語る乃恵の声は淡々としていて、きっと、真実を聞いてから一晩、考えて考えて、覚悟を決めてあるのだろうと思えた。
それでも恋宵はまだ食い下がり、乃恵よりも困惑を表情に表している。
潰されちゃうよだとか干されちゃうよだとか、どうしてこんなに必死で止めているのか、恋宵自身にさえわかっていない様子だ。