ONLOOKER Ⅲ
そうして何度目か、恋宵がまた「でも」と口にした時だった。
あの、と控えめにかけられた声は、後輩のものであることに気付く。
「そのプロデューサーの話なんですけど」
「え……? はい」
「例えば向こうが先に恋宵先輩側を訴えたとしますよね」
「……直ちゃん?」
「それでこっちの証人として、2年以上前の先輩の路上ライブで、今回の新曲の原型が歌われていたのを聞いたことがある、っていう人が出てくる」
「ですから。先日私も勢いに任せて言ってしまいましたけれど、Inoさんの熱狂的ファンが証人になっても、いくらでもこじつけて証言を無効化できると」
「それ、その証人が、先輩が訴えられてから名乗り出た場合の話でしょう?」
「え?」