ONLOOKER Ⅲ


直姫は、乃恵が生徒会室に来てからも自分の席を離れずに、相変わらずずっとパソコンを眺めていた。
人の話を聞いていないようで、やはり意外に聞いているらしい。
急に話に参加した直姫の言わんとしていることに逸早く気付いた夏生は、驚いた様子など微塵も見せずに、彼女の方を向いた。

「やっと見つかったんだ?」
「はい。これ見てください」

夏生との会話は、なぜか噛み合っているようだ。
直姫がパソコンをくるりと向けたのに従い、それぞれがその画面を覗き込む。
離れたところにいる夏生、紅、恋宵、乃恵の4人に聞こえるように、聖が言った。

「……え? ブログの記事だよ、ただの」
「ブログ?」
「あ、『路上ライブをみかけました』って題名にある。内容は…………」

そうして聖が読み上げた記事には、伊王恋宵という中学生くらいの少女が、公園の広場で、ギター1本だけを抱えて歌っていた、ということが書かれていた。
歌詞も耳で拾えた数フレーズが記されてあって、それは、恋宵がこの間生徒会室で歌っていた歌詞と、同じものだった。


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