ONLOOKER Ⅲ
「うん……実はね。落葉松さんが、電話で喋ってるの、聞いちゃった」
「それ、俺も聞いてた」
「たまたまかよ!」
待ち構えていたような聖のツッコミは、夏生に黙殺されることとなった。
「もしかして、昨日の放課後か? 戻ってきた時、様子がおかしいとは思っていたが……。気が利かなくて、すまない」
「え、何ゆってるにょろよー。紅ちゃんが謝ることなんもないじゃにゃい」
ここ数日、追い込まれた恋宵の口調の変化から、彼女がこの喋り方をするのは、おどけて場の空気を和らげたいときだと、十分に分かっていた。
分かっていたからこそ、少し安心する。
強がっていることには変わりないが、最近は強がることさえもままならないほど、精神的に負担がかかっていたのだ。
ふざける余裕が出来たということは、少しでも負担が減ったと思っていいのだろう。