ONLOOKER Ⅲ
時は変わって、生徒会メンバーが久し振りに恋宵の笑顔を見た1時間後、その彼女はまだ生徒会室にいた。
ソファーの背に凭れかかって、窓の方へと顔を向ける。
その表情は、恐らく誰も見たことのない、ある特定の1人にしか見せないものだった。
無表情とも少し違う、きっと“Ino”としてならばそれほど不自然でもない顔だ。
“恋宵”だからこそ違和感のあるその態度で彼女は、西日を背中に浴びる人物に話しかけた。
「アレもね、聴こえちゃったんだ」
いつもの弾むような話し方でも、落ち込んだ時の自嘲混じりでも、年相応の何も纏わない声色でもない。
何と形容することもできない、ただただ普通の調子で、無言で続きを促す話し相手に、語る。
窓を背に、この室内では“王座”に位置する席に、すべからくして居るその人物は。