ONLOOKER Ⅲ
その翌日もまた、“ノエル”の名前がメディアを独占していることに、変わりはなかった。
スポーツ新聞や週刊誌にはとりわけ目立つ色で『ノエル引退』の文字が並び、ワイドショーでは昨日の記者会見の様子が繰り返し放送され、ウェブニュースのコメント欄には秒刻みで書き込まれ続けている。
その一方で、“Ino”の新曲発表も同じように、世間の賑わいを加速させていた。
人気絶頂の現役高校生歌手が、一方はマイクを置き、他方は待望の新作を発表したのだから、当然といえば当然だ。
きっとこの後1週間はこの話でどこも持ちきりだろうなと、前日午後2時の衝撃を思い出して、直姫は思う。