ONLOOKER Ⅲ
梅雨入りの出会い
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その日珍しく直姫は、急いでいた。
例え授業に遅刻しそうでも、職員室に呼び出されていても、焦りなどはた目にはまったく見せないマイペースな直姫が、である。
そんな彼女がなんとなく形だけでも小走りでいたのは、今日が月に一度の生徒会定例会議の日で、学園最強である副会長が遅刻にうるさい人で、さらに言えば、ぐずついた空が今にも雨を降らせそうだったからだ。
ちょっとした用事で居吹に呼ばれて、放課後、職員室のある南校舎へ寄っていた。
そのぶん、いつもより北校舎への距離が遠くなっていたこともある。
近道のため、降り出してしまう前に、中庭を突っ切って北校舎へ向かおうとしていた。
だが、その瞬間その場所で先を急いでいたのは、直姫だけではなかった。
セミロングのストレートヘアを揺らして走る、小柄な少女。
日本人女性の平均値を遥かに下回る体格だけ見れば、少し発育のいい小学生と間違えてもおかしくはないほどだ。
しかし、背格好とは裏腹に大人びたその顔は、今は不機嫌に歪んでいた。
苛立ちをあらわにして急ぎ足で歩く彼女が、直姫に気付かないのも無理はない。
季節ごとに植えられた植物たちが、ちょうど二人の姿をお互いから隠していたのだ。