ONLOOKER Ⅲ
挙げ句にこの雨で、なんとなく気分も晴れない。
すっかりやる気をなくしてしまった直姫は、シャープペンを持った右手はそのままに、左手は頬杖をついて、細く落ちる雨粒をただ眺めて過ごしていた。
(……あぁ、雨か……)
そういえばわりとよく聴くロックバンドの楽曲に、雨を題材にした歌があった。
思い出したらその曲を聴きたくなって、図書室にCDやDVDが数枚置いてあったのを思い出す。
悠綺高校の図書室は、『室』とは名ばかり、西校舎の隣にある道場のさらに向こうにある、大きな建物だ。
広さと蔵書数ならば、近所にあるこの町の市立図書館よりもはるかに大規模であり、もはや悠綺図書館と呼んでもいいくらいである。
中には本や辞典や雑誌はもちろん、レンタルCDやDVDのスペースまである。
学校の図書室になぜそんなものまであるのか不思議なところではあるが、誰もなにもつっこみはしない。
昼休み、食事を終えたら久しぶりに行こうかと考えながら、終業のチャイムを聞いていた。
「ねぇ直姫、この文法ってこれであってるんだっけ」
「うん、大丈夫だと思うよ」
「直姫は作文できた?」
「え、全然」
「えー……」