ONLOOKER Ⅲ
「ちょっ、恋宵ちゃん!? なんでそれ見てんの、恥ずかしいんだけど!」
「サムすぎる恋愛ドラマでクッサイ台詞吐いてる柏木くんとそれ見て照れるひじぃのギャップを見たかったのにゃ」
「夏生どうしよ恋宵ちゃんがサディスティックに目覚めちゃったああああ」
情けない声をあげている聖が、“去年一番泣けた純愛”とまで言われたそのドラマで、ワイルドで俺様な影のある主人公を演じていたとは、役者とはなんともすごい職業だと思わざるを得ない。
そして正直それのどこがどのように心を動かすのかよく分からなかった直姫は、呆れたようにそれを見ていた。
もっとも、彼女の心を大きく揺さぶることのできる物事など、今のところ片手で足りるほどしか見つかっていないのだが。
「あーおもしろかったにょろ」
「俺のせいじゃないから! 俺のせいじゃないからね!? 脚本がくさいんだよ!?」
「聖先輩……そんなこと言っちゃ、脚本家さんにも監督さんにも失礼ですよ!」
「ま、真琴……! お前だけは味方だと思ってたのに!」
そうこうしているうちに、ドラマの再放送だったテレビ画面は、夕方のニュースのオープニングへと変わっていた。
空気がどこかが嫌な湿気を帯びているのは、未だ降り続けている雨のせいだ。
相変わらずがやがやと騒がしい室内も、なんとなく暗く感じる。
スピーカーからは、ニュースキャスターの硬い声が流れ出していた。
『では、次のニュースです。本日正午、歴代の元首相ら三人が対談を……、』
――ばち、
不意に、ぴりぴりと余韻を伴って、画面が切り替えられた。
なにかを遮るような砂嵐に一瞬動きを止めた真琴が、再び口を開く前に、その動作を行った張本人が言う。