ONLOOKER Ⅲ


***

案の定生徒会室には、もっともそこにいなければいけないはずの生徒会長の姿はなく、直姫は紅の小言を免れた。

そんな、翌日。
相変わらず眠そうな顔で登校した直姫を、奇妙な出来事が待ち受けていた。


「あ、昨日の」
「おはようー」
「……おはよう、ございます?」


校門の前に立っていたのは、紛れもなく昨日中庭でぶつかってしまった、あの少女だった。
その彼女が、あの時の慌てたような焦ったような様子とは打って変わって、直姫に明るく話しかけてきたのだ。


「3年B組、東千佐都でっす、よろしくねー」
「え、あ、はい、……西林寺、直姫です」


状況も解らぬまま、ぎこちない自己紹介のような、どことなく間の抜けた言葉を交わす。
東千佐都(あずまちさと)と名乗った彼女は、戸惑う直姫に、くすくすと笑みをこぼした。
さも可笑しそうに、けれど決して相手に不快感を与えないような、そこだけ幼げな笑い方。

直姫は、ますます戸惑った。

< 4 / 208 >

この作品をシェア

pagetop