ONLOOKER Ⅲ
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案の定生徒会室には、もっともそこにいなければいけないはずの生徒会長の姿はなく、直姫は紅の小言を免れた。
そんな、翌日。
相変わらず眠そうな顔で登校した直姫を、奇妙な出来事が待ち受けていた。
「あ、昨日の」
「おはようー」
「……おはよう、ございます?」
校門の前に立っていたのは、紛れもなく昨日中庭でぶつかってしまった、あの少女だった。
その彼女が、あの時の慌てたような焦ったような様子とは打って変わって、直姫に明るく話しかけてきたのだ。
「3年B組、東千佐都でっす、よろしくねー」
「え、あ、はい、……西林寺、直姫です」
状況も解らぬまま、ぎこちない自己紹介のような、どことなく間の抜けた言葉を交わす。
東千佐都(あずまちさと)と名乗った彼女は、戸惑う直姫に、くすくすと笑みをこぼした。
さも可笑しそうに、けれど決して相手に不快感を与えないような、そこだけ幼げな笑い方。
直姫は、ますます戸惑った。