ONLOOKER Ⅲ
入学式の放課後以来に感じた緊張感に、自然と姿勢もよくなる。
極力誰とも目を合わせたくなくて、視線は斜め下あたりを行ったり来たり。
しかしそれが怯えや恐怖からくる挙動不審ではなく、ただ面倒を避けたい一心だということは、その目の投げやりさとこれまでに見てきた彼女の性格から、真琴たちには明白だった。
精神的リンチにも近いこの状況で、あまり柄のよろしくない先輩たちを前にこの態度だ。
度胸は認めざるを得ないが、ふてぶてしすぎて、フォローもしづらい。
とはいえ実際のところ落ち着いているのは、当の本人と夏生だけである。
相変わらず彼らを前にした准乃介の目は笑っていないし、紅は笑顔のまま終始無言でいる隣の彼に肩を竦め、真琴はおろおろと険悪な雰囲気に戸惑い、恋宵と聖はそわそわしていた。
そしてとうとう居心地の悪さが限界を越えたのか、紅が口を開く。
内容は決して、この重苦しい状況を打破できるような、明るい話題ではなかったが。
「な、なぁ、その、千佐都から聞いているのか……?」
「なにを?」
「いや、だからその……できれば他言は」
あの時、直姫が着替えているところを見てしまった千佐都は、本当は女であることをはっきり知ってしまったはずである。
そこの扉、休憩室の前で呆然と呟くのを、全員が聞いているのだ。
失恋のショックで、全てを彼らには話してしまったものと、当然のように思っていた。
だが大道寺倭は、強面の顔をさらに険しくした。