ONLOOKER Ⅲ
「なんの話? そんな聞いちゃまずいことしたわけ?」
「え……なにも聞いてないんですか」
「は? まさかお前もホモとか言わねぇよな」
「うっわー生々しい! 西林寺に限ってはなんか生々しい」
「な、自分はノーマルですけど」
「君はそうでもショタコンのホモにはモテそうだよねぇ」
「ぶふっ、」
笑いを堪え切れなかった颯がコーヒーを噴き出しそうになっているのを心底迷惑そうに眺めながら、直姫は実に不本意な思いで一杯だった。
わざとなのだろうが、失礼だしうざったいし鬱陶しいしうるさいし、最悪な気分だ。
千佐都からなにも聞いていないという情報を引き出した今、もはやへりくだる必要はまったくないようにも思える。
実際これまでへりくだっていたのかどうかは、今はおいておくとしてだ。
ともあれ、これは、結果的には無事、ということなのだろうか。
とりあえず生徒会以外に今この学校にいる生徒で、直姫の秘密を知ってしまったのは、今のところ千佐都だけだろう。
これからも他言せずにいてくれるかどうかは彼女次第であるが、他人の秘密をそうべらべらと言いふらしてしまうような人間だとは思えない。
千佐都が失恋したと思っているということは、目先の問題、女生徒からの対応に困る猛アタックや、その子に過保護な幼馴染みが四人もいて絡んでくるということも、一応は片付きそうだ。
どういうつもりで千佐都が口を閉ざしているのかは、わからない。
真意は直接彼女に尋ねるしかないだろう。
とにもかくにも、今は。
「てゆーか帰ってください」