ONLOOKER Ⅲ

少女と違和感、少年と違和感



違和感に、少女は眉を潜めた。
訝しげな表情を浮かべてなお美しい彼女の目線が、小さく泳ぐ。

それは、いつでも凛として揺るぎない彼女においては、とても珍しいことだった。
それを一番に知っていて、そして一番に気にかけている彼は、彼女の様子にこそ違和感を感じて、問う。


「紅?」


様々な疑問を詰め込んで、口にしたのは、少女の名前だけ。
しかし振り返った彼女は、いつもと変わらなかった。
今日、二回目。


「すまない、また教科書を忘れたみたいだ。隣のクラスに借りに行って来るから、准乃介は先に行っててくれるか?」
「……珍しいねぇ、紅がそんなに忘れ物するなんて」


彼女の表情の変化ならば、どれだけ些細なものでも見逃さないと自負する彼は、穏やかに言った。

苦笑いを浮かべて背中を向けた彼女に、彼がなにを思ったのか。
誰にも知るよしは、ない。

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