ONLOOKER Ⅲ
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その日直姫が感じた不思議な感覚は、いつもと同じようでいつもと違う、日常的なようで非日常的な、そんな違和感によるものだった。
なにが違うのか、具体的にと問われれば、その答えは言い辛い。
なんとなくかすかに、ニュアンスでしかわからない、けれど確かにある、そう彼女は感じていた。
そしてそれは、彼らも同じだったようで。
普段ならば紅に叱られるまで騒がしい聖と恋宵も、ほのぼのと和やかに過ごす真琴も、どこか居心地悪そうに落ち着かない様子だ。
唯一なにも変わらないのは、休憩室にてこんこんと惰眠を貪る夏生だけ。
そしてなによりも、三年生の二人、紅と准乃介が、やけにぎこちないのだ。
ぎくしゃくしているのとは少し違う、あえて言うなら、喧嘩中のような距離の置き方。
しかし、いつも紅が一方的に准乃介を避けることはあっても、その逆は今まで見たことがない。
この二人に限って、そんな状況はしっくりこない気がしてならなかった。
なにかあったのか直線的に尋ねるのは当然憚られ、かといって二人の間に入って場を盛り上げる精神力も誰にもなく、この妙な空気をどうしようもない。
聖と恋宵はこの状況をなんとか理解すべく、さっきから真琴や直姫を無理矢理交えてこそこそと話していたが、この場の誰にとっても異様な事態に、困惑は増すばかりだった。