ONLOOKER Ⅲ
(紅ちゃんと准先輩、喧嘩でもしたのかにゃあ……)
(まさか別れ話……!)
(え、付き合ってたんですか!? そんなんじゃないって紅先輩言い張ってましたよ?)
(もし付き合ってても紅ちゃんがおとなしく認めるワケないにょろ。学校中から名物カップル扱いされて旦那嫁呼ばわりされるの目に見えてるからにゃ)
(実際のとこどうなの。どこまでいってると思う?)
(てゆうかそういう邪推やめましょうよ。色ボケてる場合ですか聖先輩)
(な、直姫……)
直姫の毒舌も、入学式以来四ヶ月も経たないうちに、すっかり日常風景になってしまっている。
今や眉尻を下げてたしなめるのは真琴しかいないし、聖も多少の毒ではへこたれなくなっていた。
普段ならここで、准乃介の爽やかで穏やかな追い討ちがあるところだ。
だが黙々と作業に徹する彼から、ゆるい野次が飛ぶことはない。
狂いっぱなしの調子を合わせる術もなく、ただ時間と聖のそわそわだけが進んでいった。
ようやく目を覚ました夏生が、目覚めのエスプレッソを片手に、休憩室から出てくる。
そしておもむろに、言った。
こんな不穏な空気の原因を悟るに至る、そんな言葉を。