ONLOOKER Ⅲ
「あ、夏生、おはにょろ」
「ん。……ねぇ、そういえば依頼来てるよ」
「え、まじ?」
悠綺高校の生徒会は、学校のトラブルシューターという別の顔を持っている。
学校内でなにか事件が起きれば、真っ先に動くのは彼らだ。
権力とコネと情報網をフル活用し、外面的には穏便に波風立てずに物事を解決するのが、彼らの役目なのだ。
形式的には誰かの依頼を受けて動く、ということになっているので、内容は理事長が選ぶが、個人からの依頼も受けることになっている。
「どこから? 最近そんな事件ってなんかあったっけ」
「特に聞いてないですね……そんなに大事になってないんじゃないですか」
「じゃあ、個人からですかね。誰なんですか?」
「えーと、ほら、そこに」
緩慢な仕草で腕を上げる、夏生。
伸ばした手が指した人物を見て、人を指差すなんて失礼だとか、どうして先にその話をせずに寝ていたんだとか、そんな考えは微塵も浮かばなかった。
そんなことよりも、ただただ、驚きが先行したのだ。
なぜなら、夏生のいまだ眠そうな視線の先にいたのは、今の今まで完璧に我関せずという姿勢を崩さなかった、彼だったのだから。
「え? ……准乃介先輩……?」