ONLOOKER Ⅲ
「そんなのお前たちの力を借りるまでもない、自分で解決できる!」
「紅先輩」
「っだいたい、どうして准乃介が!」
「、紅先輩!」
急に血相を変えた紅は、夏生がわずかに荒げた声にさえ、肩を揺らした。
端から見ている直姫たちには、なぜその依頼を准乃介が持ち込んで、なぜそれを聞いた紅が激昂して、そして彼女がなににそんなに動揺しているのか、察する方法はない。
ただ、やけに緊迫した雰囲気に、いったいなにがあるんだと、探るような目線を夏生に向けるだけで。
その夏生は、誰の疑問にも答えないまま、紅に向き合っていた。
「詳しい事情は知りません、けど……俺たちが受けた依頼は、あなた一人の問題じゃない。悠綺高校生徒会の、“副会長”の問題です」
「……な、」
「あなたは象徴なんです。その意味、わかってますよね?」
紅は唇を噛み締めて、俯いた。
握った震える拳は、決して大きくはない。
直姫はその後ろ姿を見て、それから、准乃介を見た。
結局一言も口を開かなかった彼の、恐ろしいまでに美しいだけの無表情も、細めた眼の意味も、全くわからないままだった。