ONLOOKER Ⅲ

レーザービーム、のんびり屋


 * *

「紅先輩、犯人に心当たりは?」
「……あったら、とっくに自分で話をつけている」


なんとか紅を落ち着かせ、事態の調査に乗り出したはいいが。

一応の被害者である(本人はそんな呼ばれ方を許さないだろうが)彼女は、さっきからずっと顰めっ面で、言葉も少なく、声もいつもより低い。
不機嫌だなぁ、と内心で溜め息を吐く直姫だが、こんな時にいつも優しげに微笑んでフォローに回る彼も、今は表情を消して淡々と自分の役目をこなすだけだ。


正直いって、調査状況は、あまり進展していなかった。
嫌がらせが私怨によるものだと仮定して、紅に対する理不尽な嫉妬や僻みや逆恨みなど、腐るほどあるといって過言ではないのだ。

綺麗だから、頭がいいから、スポーツができるから、剣道が強いから、仕草が上品だから、育ちがいいから、生徒会だから。
憧憬の眼差しを浴びるぶん、それだけでその人を貶めたいほど恨む理由になりうる、そういう存在なのだ。
もちろんそれでいやがらせが正当化されるわけはないが、人から注目されるというのは、そういうことだ。

さらに、それが紅に標的を絞っているのか、それとも生徒会への当て付けなのかも定かでなかった。
紅だけでもいわれのない悪意をいくつ受けているかわからないのに、それが生徒会役員全員に範囲が広がるとなると、見当もつかなくて仕方がない。

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