ONLOOKER Ⅲ
だが、紅でさえ反応に困る熱血っぷりにも、夏生はさすがというべきか、全く動じなかった。
温度差の激しい声で、言う。
「松永先生、紅先輩は大丈夫ですから。それより少し聞きたいことがあるんですが」
「もちろん、私に出来ることがあったら、なんでもする!」
ポニーテールの茶髪を揺らして振り返った圭は、目力の強い視線を、夏生にまっすぐに向けた。
あまりに一直線なので、レーザー光線でも出せるのかと思ったくらいだ。
だが夏生は光線も吸収する冷たい目で、ゆるりと視線を返した。
「じゃあ、こんなこと、先生に聞くのも気が引けるんですが……」
まったく気が引けていないような目をして、申し訳なさそうな表情と声色を作る。
「なにか、心当たりはありませんか? 教室移動の時によくギリギリまで残っている生徒がいるとか、よく教室に来ている違うクラスの生徒とか」
「うーん……私としては、生徒を疑うことはなるべくしたくないんだけどな」
「なんでもいいんです、なにかありませんか?」
「おしゃべり好きの女子ならよくあることだが……そういうのではなく、ということだろ?」
「えぇ」
「……それなら、」