ONLOOKER Ⅲ
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調査を始めて、そろそろ一週間になる。
数人の教師や生徒から話を聞いているうちに、ある三人の人物の名前がよく挙がるようになっていた。
一人は二年の、豊中伸二(とよなかしんじ)。
元剣道部員で、紅の扱きの厳しさに耐えられず、少し前に退部したばかりらしい。
もう一人は三年A組の、里田麻奈美(さとだまなみ)。
准乃介の大ファンを以前から公言していて、彼への想いから紅を毛嫌いしているのではと、一部で噂になっていた。
C組にいる二人の女子生徒と仲がいいらしく、頻繁に教室に出入りしていると、圭の話にもあった人物だ。
そして三人目は、クラスメイトの玉川剛史(たまがわつよし)。
一年ほど前から紅に片想いしていて、もう五回は潔く断られている。
最近ではその恋愛感情ももはや意地のようになっていて、紅も扱いに困っていると言っていた。
この三人の中に確実に犯人がいるとは限らないものの、これだけ何度も名前が挙がるということは、可能性は決して低くないだろう。
しかし、生徒会がこの件を調べていることがもう校内である程度知れ渡っているにも関わらず、悪戯はいまだ止んでいなかった。
“あの”石蕗紅が、何者かにいやがらせを受けている。
そんな噂が広まるまでに、それほど時間を要するはずもなく。
犯人に対する生徒たちの怒りやらなにやらは激化の一途を辿り、我らが麗しの副会長を守れとばかりに本人以上に膨れ上がる警戒をかい潜って、結局事態は治まる傾向すら見られないのだ。