ONLOOKER Ⅲ
「うーん、どう? あれ」
「さぁね……噂が本当だとして、正直に言うわけはないけど」
「気は弱そうだけど。嘘吐いてるように見えますか?」
「俺にはわかんないね」
探り探り言葉を交わしている、という印象だ。
なにしろ、彼の話の真偽はまったくわからない。
夏生たちとも違うクラスで関わりはほぼないと言っていいし、人柄も知らないのでは、判断のしようがない。
生徒会室の扉が、再びノックされた。
恐る恐る、といった様子で顔を覗かせたのは、幼い顔立ちの女子生徒だ。
「え、と……里田、麻奈美です」
「呼び出したりしてすみません。少しお話を伺いたくて」
「……あ、はい……」
瞼を伏せる仕草や、あまり大きくない声が、彼女の内向さを窺わせる。
さっき豊中に話したのと同じように漠然と尋ねると、一点を見つめてしばらく考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。
「心当たり……ですか? 特には……私、石蕗さんとは違うクラスだし」
自分がこの面談の対象になっていることに、あまり疑問を持っていないのだろうか。
ただ聞かれたことにだけ答えた、という感じだ。
夏生は、里田に気づかれないように、ちらりと准乃介に目をやった。
それから、質問を変える。
「そうですよね。じゃあ……石蕗先輩は、クラスメイトにどう思われてると思いますか?」
里田は小さく首を傾げた。
それからまた、言葉を選びながら言う。