ONLOOKER Ⅲ
「そうですね……皆、好きだと思います。成績もいいしスポーツ万能だし、綺麗だし。……やきもちみたいな感情を持ってる子は、いると思います、けど……」
「けど……?」
「えぇと、憧れてるんじゃないかな、と思います」
「……そうですか。ありがとうございます、わざわざ来ていただいて」
終始俯いたままだった彼女は、去り際のたった一瞬だけ、准乃介を見た。
それから、その誰もいない隣を。
「夏生さぁ、さっきの質問……」
「皆の代弁みたいなふりして、自分が思ってることを答えた、ってかんじですよね。先輩、そのつもりで?」
「まぁ。なんかしっぽ出すかと思ったけど、いまいちだったね」
「あれで猫被ってたら、相当手強くない?」
里田の曖昧な態度に口々に意見が出る中、やはり准乃介だけは、黙ったままだった。
そして最後に入ってきたのは、一年前から紅にふられ続けているという、玉川。
准乃介の視線に、前の二人ほどは怯む様子も見せず、ふてぶてしくすらある目を向ける。
別段濁すわけでもなく切り出すと、彼は口の端を吊り上げて笑った。
「一年の頃から何度も玉砕しているのは事実ですが……それを恨んで僕が石蕗さんに嫌がらせをしてるんじゃないかって、そう疑ってるんですか?」
「別にそうとは言ってませんよ。ただ、紅先輩との間になにかトラブルがあったり、他の誰かと揉めていたり……そういう話は、知りませんか?」
「……別に」