ONLOOKER Ⅲ


中指で眼鏡を直す仕草が、やけに嫌味に感じる。
紅に好かれていないことは自覚しているのか、フラれたということはあっさり認めている。
自分でわかっていながらアプローチを続ける理由が気にはなるが、とにかく、誰にも好印象を与えなかったことだけは確かだ。
短絡的であるとわかってはいるが、聖の言葉を否定はしきれなかった。


「あいつ怪しいって、絶対!」
「先輩、そんな決めつけちゃだめですよ……」
「でもなんか嫌な感じにょろぅ」
「だいたいなんで何回もフラれてんのに諦めないわけ?」
「確かに……ストーカーってほどでもないんですよね? ただ時々告白してはフラれるって、なにやってんですかね」


玉川の執念も不可解だが、話を聞いた結果、夏生の質問に対する最初の反応が、三人ともまるでバラバラだったのが気になった。
豊中は第一声で激しく否定、里田は惚けたように聞かれたことだけを答え、玉川は半ば開き直りのように、斜に構えた態度。


「なんか、豊中さんの過剰な反応も逆に怪しく思えてきました」
「そんなこと言ったら、里田さんだっておとなしいふりして裏では……ってことかもよ?」
「聞いた話では、豊中さんは剣道一筋で熱血、里田さんは内気でクラスメイトともあまり仲良くはない、ってイメージでしたよね」
「で、玉川が、嫌味っぽいけど勉強はできる」


ここで話して得た印象と、クラスメイトたちなどから抱かれているイメージとでは、それほど食い違いはない、ということだろう。

豊中は部活動、里田は嫉妬、玉川は恋愛感情。
どれもトラブルと呼ぶには逆恨みの要素が強すぎるが、三人とも動機でいえば十分なように思える。

好き勝手言い合っているようで、考えは一方向にまとまりつつあった。
しかしそんな中でも、じっと口を閉じたまま、ただ思案するように細められた目が、一人分。

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